■放っておくと徐々に不快感が増す、足の付け根の腫れ
ヘルニアとは、身体の組織が本来あるべき部位からはみ出した状態を言う。鼠径ヘルニアは、本来おなかの中にあるはずの腹膜や腸の一部が脚の付け根にある筋膜の間から皮膚の下に出てくる疾患のことで、一般的には「脱腸」と呼ばれている。初期の症状は腹圧をかけたり、立ち上がったりしたときに脚の付け根がふくらむ。嵌頓(元に戻らないこと)した場合は急いで手術をしないと命にかかる場合がある。乳幼児のほとんどが先天的なものだが、40歳以上の発症では引っ越しや工場で重いものを運搬したり立ち仕事だったりと、職業によるところが大きい。便秘症の人、前立腺肥大症の人、妊婦も注意する必要がある。
■症状■
【初期】●脚の付け根・下腹部の柔らかい腫れ(押すと引っ込む)
【中期】●脚の付け根・下腹部の不快感・違和感 ●痛み
【重度】●脚の付け根・下腹部の硬い腫れ(押しても引っ込まない)●腹痛 ●吐き気●嘔吐
■治療法■
●手術 メッシュなどの人工物を体内に入れて、または自分の身体の組織を使って穴をふさぐ。
※高齢者の場合は腹壁がもろいので手術せず、経過観察となることがある。
<高齢者は注意が必要です!>
①ヘルニアは自然に治癒することはないので早めに治療を促す。
②高齢者では、手術後の予後がよくないことがあり経過観察をする。
☑アセスメントのポイント
●手術前と比べてADLの程度はどうか
●排便習慣、排便回数はどうか
●発症の原因となるような原疾患について確認
★ケアプラン作成のツボ★
今後の見通しと支援
鼠径ヘルニアは、手術により完治しますが、手術方法によっては、再発することもあります。
肥満などの発症の引き金となるものを取り除き、生活習慣を整えます。
日常生活の留意点
●前立腺肥大など発症の原因となりそうな疾患は治療することが大切です。
●一般的に散歩などの軽い運動は、手術翌日から行うことができるので、習慣づけます。
●減量や禁煙をすすめます。
●重たいものを持つなど、腹圧を高めるような動作に注意します。
●食物繊維の多い食事などで、便秘の解消に努めます。
●適度な運動を生活の中に取り入れます。
医療連携のポイント
原疾患の治療方針や留意点について相談・確認をします。